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横浜家庭裁判所 平成3年(家イ)810号 審判 1991年5月14日

申立人 ロバート・S・シンプソン

相手方 キャサリン・M・エバート

主文

申立人と相手方とを離婚する。

理由

1  調停申立ての要旨

(1) 申立人と相手方とは、平成3年2月1日、日本国(東京都)においてその方式により婚姻した(平成3年2月1日東京都港区長に婚姻届出)。

(2) ところが、相手方は婚姻したわずか1時間後に、申立人に対して「愛していないので離婚をしたい。」と言い出し、以後申立人と相手方とは、性交渉することも同居することもなく、別居状態のまま今日に至った。そして、婚姻に関するカウンセリングにおいても、この結婚は、今後見込みのない破綻したものと判定されている。

(3) したがって、申立人と相手方との婚姻は、現在すでに回復する見込みのない程度に破綻しているものである。よって、裁判所による主文同旨の処理を求める。

2  当裁判所の判断

(1) 本件記録中の申立人及び相手方の各出生証明書(申立人の分については出生証明に関する宣誓供述付)及び法定住所宣誓供述書、相手方の軍関係雇用証明書並びに当事者双方の当裁判所に対する各申述によれば、本件において、相手方は我が国内(神奈川県)に常居所をもつものの、当事者双方ともアメリカ合衆国国民であり、かつ法定住所は同国ハワイ州であることが認められる。すると、本件離婚の処理については、我が国裁判所もこれを管轄できるものの、その要件及び方式はともに同州法に準拠すべきである(法例第14条、第16条、第28条第3項、第32条ただし書)。

ところで、本件は後記のように当事者間に離婚の合意ができている事案であるところ、記録中の条文の写しによって認められる同州法によれば、離婚は、このような場合をも含めてすべて裁判所の裁判によることとされている。そして、我が国司法機関における人事案件の処理方式中、かかる離婚事案の処理につきその実質において最も同州法の方式に沿うこととなるのは、家事審判法第23条の審判の形式であると認められる。そこで、本件の離婚については、同条を類推適用して処理するのが上記準拠法の定める離婚の方式に適うものと判断し、以下の(2)のように同条による手続き及び処分を行う。

なお、同条は、当事者の合意につき裁判機関が一定の事実上、法律上の判定を加えたうえでこれに相当する処分を行うものであるところ、協議離婚及び調停離婚の制度がある我が国法制のもとで、明文上は離婚を対象に加えてはいないが、このような合意自体に基づく離婚方式を欠く法律に準拠する場合においては、その準拠法の趣意や当該国におけるこの種合意事案の処理の実情が我が国における同条の趣意や運用に類似する限り、我が国司法機関においてこれを離婚につき類推適用することが可能であると解する。

(2) 本調停委員会における調停において、当事者間に主文同旨の合意が成立し、その原因事実についても争いがない。そして、本件記録中の婚姻届受理証明書及び別居同意書中の記載並びに本調停における申立人及び相手方の各陳述によれば、申立ての要旨記載の各事実を認めるに十分である。また、この認定した当事者間の婚姻の実情は、本件の準拠法たるハワイ州法によって離婚を許すべき事由に当たるものと認められる。

よって、当裁判所は、当調停委員会を組織する家事調停委員池原季雄及び同長井恭子の意見を聴いたうえ、本件申立てを正当と認め、家事審判法第23条により、主文のとおり上記合意に相当する審判をする。

(家事審判官 内田恒久)

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